はじめまして
君の瞳にへのへのもへじです
本当のこと
動物が好きだ
小さいころから虫も触れた
何にでも触ろうとするから、母は肝を冷やしていたらしい
特に小動物が好きだった
でも
正義感が強く、優しく活発だったあの頃の女の子はもういない
大人になるということは、ありのままの自分を殺すことだと知った
あの頃の女の子は少しでも私の中に存在してるんだろうか?
こんな人間になる予定はなかった
私の理想だった大人像にはなれなかった
私という存在は嘘でできているのかもしれない
あんなに動物が好きだった女の子は、成長するにつれてどこかへ消えてしまった
今でも動物は好きな方だ
それでも時々、本当は好きじゃないかもしれないって思うこともある
自分の思い通りにならないことに苛立つことがあったから
動物に対して、気に入らないとか怒りの感情が存在すること自体、私はもう終わってる
完璧な人間なんていないから仕方のないことかもしれない
でも、今まで飼ってた子たちにもそんな思いを抱いてしまっていた
動物を好きだと言える資格が、私にはなかったのかもしれない
言い表せない感情
私が小さい頃の母の実家は、ちょっとした小動物園だった
犬は外に繋がれ、猫は放し飼い
今では虐待と言われてしまうような飼育方法だった
動物好きの私も、犬はちょっと怖かった
大きかったし、吠えられるから
全力で嬉しい気持ちを表現してくることが、小さかった私には恐怖だった
兄貴がケガをさせられたこともあって、よりビビった
そんなこともあって、犬には近づけなかった
猫にだけ興味を示し可愛がった
今思うと、昔の母の実家は広かった
どこまでを所有していたのかは知らないけど、祖父が亡くなった時に親戚から
リゾートホテルを建てるから売ってほしいと言われたのだ
騙されて二束三文で手放すことになったその土地に、リゾートホテルは建たなかった
引っ越し先には猫を連れていけなかった
その頃にはもう猫しかいなかった
しばらくは通いで猫にご飯をあげに来ていた祖母
私も手伝ったことがある
結構な数の猫がいた
もともと放し飼いだったので、自由奔放に暮らしてた猫たち
野良猫がご飯もらってるみたいな光景だ
詳しくは知らないけど、もともとは保護した動物たちを飼っていたようだ
母がその家に住んでた頃の話だ
虐待されてた犬を保護したり
実験で使うはずだったモルモットがいらなくなったからと全部引き取ったり
50羽ほどのハトを引き取ったり
とにかく保護してたらしい
私が生まれて物心つく頃には、犬と猫しかいなかった
それでも、犬は5匹くらいいたし、猫は数十匹だ
猫は放し飼いとは言え、すごい数だ
祖母の家に行くたびに子猫が生まれている印象が強かった
ミャーミャー鳴いてまだ目も開いてないような可愛い子たちだ
私は目の前の子猫の可愛らしさしか見てなかった
可愛いだけで正義
そんなことを思う
現実は私が思ってる以上に残酷だった
土地を手放し、しばらくは猫たちのところへ通ってた祖母
ご飯をあさりにタヌキが出るようになった
人が住まなくなった土地だ
リゾートホテルが建てらることなく放置されたその地は野生動物の住処になった
祖母は歳だったこともあり、タヌキの出没を機に行かなくなってしまった
タヌキが来るようになって、猫たちも姿を見せなくなってしまったようだ
私は複雑な気持ちになった
猫たちを残していったと聞いた時には、祖母に対して不信感が生まれた
不幸中の幸いは、放し飼いだったこと
元から猫たちは自由だったことだ
それでも、正しいとは思えない
祖母は昔の人だ
今の感覚を持ち合わせていない人だ
生きた時代が違うから、感覚が違うから、分かり合えない
それから何年も経って、私は大人になった
父から衝撃的な事実を聞かされる
猫たちは避妊や去勢を行っていなかった
子猫が生まれるたび、私は嬉しかった
その喜びの裏で
数が増えすぎて困っていた祖母は、生まれたばかりの子猫をゴミ袋に入れてゴミとして出していた
私はその話を聞いた時、怒りや憎しみ、悲しみ、己の無力さに絶望した
人間とは言えない行いを自分の祖母がやっていた
愚かな行いをした祖母に、私はどう接すべきかわからなくなった
その日から、祖母を見る目が変わった
私は父に聞かされるまで知らなかった
その時に知ったとしても、子どもの私にはどうすることもできなかっただろう
今でも無力な自分に、できることなんてなかった
この時の私は、一言で表すことができないほどの激しい感情を抱いた
こみ上げた感情は未だ、整理なんてつくはずもなく心の奥深くをさまよっている
罪の意識
祖母の犯した罪
可愛いという表面しか見ていなかった私も罪深い
何もできなかったんだから
人間は優しくも残酷にもなれる
誰もがそういった一面は持ってると思う
私が子どもの頃、自分で猫を飼わなかったのは、祖母の犯した罪があったからなのかもしれない
知らなかったこととは言え
「猫は飼うんじゃなくて、やってくるもんだ」
と言う夫の言葉が胸に刺さった
私は、祖母が犯した罪を聞きたくなかった
父も、なぜ私に話したのか
父の真意はわからないし、知りたくもない
ただ、現実に目を背けるなってことを神様が私に伝えたかったのだろう
ということにしておく
祖母が今どうなっているのか私は知らない
縁を切っているから、生きているのかもわからない
私は一生、祖母が犯した罪を忘れることはないだろう
社会人になって1年後、我が家に猫がやってきた
その後も自分の意志で動物病院から猫を引き取って里親になった
私がこうして猫を引き取ったことは
祖母が犯した罪を、償う機会を与えてもらったのだと思っている
救いたいと思う心があっても、
全ての動物を救うことなんて不可能だ
今の私にできることは
我が家にいる猫たちを最後まで愛してあげることだけだ
おわりっ
次回の投稿は
5月24日(水)10時です
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